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水嶋かおりんの『私は風俗嬢講師』レビュー

2010年7月18日

男は「風俗嬢」という単語を目にすると、どうしても注目してしまうだろう。正直言うと、僕もこの本に出会ったきかっけは、そのくだらないことだった。

しかし、これは性的なことに興味ある男に是非読んで欲しい一冊だ。風俗の常連なら、なおさら読む価値があろう。なぜなら、風俗は一般に思われているように「おっぱいを見せば稼ぐ」とか、「ただ足を広けば稼ぐ」ほど甘くないからだ。実は、この本を読むとわかるように、ほとんどの風俗嬢は数多くの辛い思いをしてから風俗に入り、風俗業界にも数知らない悩みを体験する。そして、この本の興味深いところの一つは、著者の水嶋かおりんは男性の性を攻撃せずに、この本を書いたのである。

『私は風俗嬢講師』は自伝のような感じで書かれていて、まるで著者と会話しているような印象を与える文に溢れている。後半が風俗嬢の目から風俗業界についてたくさん書かれていて、面白い。おそらく人々はタイトルを見ると、後半の話を想像する。風俗業界のこぼれ話に興味がある方には、お勧めだ。

しかし、僕にとって、一番興味深かったのは、前半だった。なぜなら、彼女はなんで自分が風俗嬢になったのかを説明したからだった。

この前、飯島愛の『Platonic Sex』を読んだこともある。『Platonic Sex』とこの『私は風俗嬢講師』を一緒に読むと、いくつかの平行線が見られる。一つ目は、両親とうまくいかなかったということ。二つ目は、学校でうまく行かなかったということ。三つ目は、日本社会が、子供の売春を許しているというあまりにもひどいこと。

まあ、これらはありきたりのテーマで、たくさんの評論家が既に指摘している。ただ、評論家の言葉には、あまり現実的な味はしないことが多い。だから、この自伝のような本の存在が非常に大事になってくる、と僕は思う。この本を通して、傷つけられている女性は、どのような経験を持っているのか、そして、どのようにその嫌な思いを埋めているのかを垣間見ることができる。

水嶋かおりんの文章を読むと改めて感じざるを得なかったのは、家族の大切さ。彼女は人りっぼちで風俗嬢をやっていて、その寂しさの中にほとんどの「顧客」が寂しい親父達だった。

しかし、その親父達のほとんどには家族があったはずだ。そして、彼女と一、二時間を過ごして、家に帰られる。でも彼女には帰られるところはなかった。ある時、職場に住んでいたことさえあった。

それでも彼女は前向きで、積極的な態度を取っている。たくさん辛い目に逢っても、積極的でいられる人に感動する。そして、その経験を本に書いて、皆に知らせることにはたくさん勇気が必要だっただろう。そういう意味で、僕は彼女を素晴らしい人間に思う。

ただ、この本を読んで薄々印象に残ったのは、「今は積極的でいられるとしても、将来はどうなるかな。」彼女はまだ26歳なので、風俗の仕事はまだしばらくし続けるだろう。だけど、歳をとるにつれ、そうはいけなくなる。そういう意味で、風俗はスポーツ業界に似ているかもしれない。しかし、スポーツ選手なら他の業界に転職しても、その経験は評価することが多い。

それに対して、風俗の経験はだいたい隠す必要がある。結婚も難しくなる。風俗業界に勤めたことのない友達に、自分の過去について話せないこともあろう。

この本を読み終えて、水嶋かおりんなら、彼女はものすごく強い人だから、歳を取っても大丈夫な気がするが、風俗業界に勤めている女性の皆はそうではない。彼女達はどうなるだろうか。

この時、飯島愛はどうなったのかを考えると、ゾッとする。

是非、風俗に通っている男性にもこのことを一緒に考えて頂きたい。

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